去年の秋、かざまゆのさんの演技に惚れた話
すごーく前に書いた下書きが残っていたので。
2018年秋、私はまた飽きもせずに日比谷に向かった。
私にとって、人生初めてのエリザベート。
チケット難な状況が色々と重なっていたけれど、なんとか、役替わりA/Bそれぞれの観劇予定を立てていた。(一部の役で、配役の入れ替えがあり、役替わりをする生徒さんは二役演じることになる)
月組さん方のことはまだ全然詳しくなかったけれど、役替わりメンバーのことは、名前と顔だけ予習していった。
1回目、役替わりA公演の観劇。
初めてのエリザベートはとても楽しかった。 エリザベートの生涯と、その周囲の人々の群像劇。
けれど、正直よく分からなかった。
理解できない自分が馬鹿なだけだな?と思ったけれど、よく分からない!という感想はよく見かけるので一安心。
けれど、未知だからこその熱狂的人気もあるのかなと感じたし、これはゆっくり何度も咀嚼する物語かなと感じた。この話はまたどこかで。
月組さんらしく感情ののった歌声が楽しかった。
役替わりメンバーの演技にも注目した。あかつきさんのルドルフは不安定で危うげで死にのみこまれて行くようで、闇が広がるダンスに死に対する表現が現れていて素晴らしいなと思った。引きずられながらも怖いのに惹かれてしまう感覚。
翌週。
2回目のエリザベート、役替わりB公演の観劇。
さてここで、事件が起こる。
あのルドルフ、なんだ??
確かこの役替わり、先週シュテファンをやっていた方が、今回のルドルフのはず。
確か、まだ下級生のタカラジェンヌさん。
先週のシュテファン、冷静さと渋さのあるしっかり者だった。下級生の方と聞いていた割に渋い演技をするなぁとぼんやり思った記憶。
ところがどうだ、この、危うげな幼いルドルフは。 先週のシュテファンと同じ方とは思えない。
本当に、第一声で頭を殴られたような衝撃を受けた。
一声一声に、一挙一動に、かざまさんのルドルフの人間性が散りばめられていた。
その演技の幅だけではなくて、先週見たあかつきさんのルドルフとも違う、また新たな一人のルドルフを見せられていた。
怖いけれど拠り所が欲しくて、でも幼くてそれしかもう選択肢が見つけられなくて、自ら死に近づいていく感覚。
演技というよりは、もはやルドルフという一人の人間を見ている気持ちだった。
このタカラジェンヌさん、お名前は、かざまゆのさん。
このルドルフで、私は彼女の演技にすっかり惚れてしまった。
この後、惚れた熱があまりに強すぎたせいか、人のご厚意と幸運に恵まれ、新人公演、そして最初あまりかざまさんを意識せずに観てしまったAパターンをもう一度観劇することができた。
新人公演でのルキーニは、泥臭さと人懐こさが残っていて誰の近くにもいそうだけれど、殺人犯で、だからこその狂気を感じる空気で、やはり一人の確固たるルキーニだった。
ルキーニを、そして改めてAパターンでのシュテファンを見て、ますます訳が分からなくなってしまった。
かざまゆのさんが一体どんな方なのか、まるで透けて見えない。舞台上にいるのは紛れもなく、シュテファンでありルドルフでありルキーニだった。
これからのかざまさんは、舞台上でどんな人物のどんな人生を見せてくれるのだろう。ワクワクして仕方がない。