宝塚に出会ってしまった話 中編

誰が二部構成だと言った!中編だよ!

 

 ビギナーズラックにより手に入れた初宝塚の機会。予習も万全。楽しみに心躍らせてついに当日を迎えるも、お向かいの劇場とハシゴ計画を立てていたために駆け込みダッシュをキめ(地方民あるある)(ないよ)、ギリギリ息は整っても心の準備は全くできないまま、いざ開演を迎える。

 (ちなみに、お向かい即ちシアタークリエでは、TENTHの公演が行われていたよ)

 

 結論からになるけど、本当に、最高な形で初宝塚を経験できた…

と冷静に言えるのは今だからであって、終演後しばらくは、あまりの楽しさにただただ動揺していた。多分、人生で初めてディズニーランドに行った時はこんな感じなんじゃないかな?みたいな心境。

 今回の演目は、ひかりふる路というお芝居(95分)+SUPER VOYAGER!というショー(55分)の2本立てだったんだけど、どちらも全然違う方向に最高に楽しかった。きっとこの演目は私の観劇人生の中で、ずっと好きな作品上位に居続けるだろうと確信しているから、両方の感想を残しておきたいなと思う。

 

 まずはお芝居、「ひかりふる路~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~」。

 

とにかく掴みが最高

 

 とにもかくにも、始まり方が最高、掴みが最高。

 最初、チェス盤を挟んで食えない会話をする二人がいるだけのシンプルなシーン。静かな音楽。いかにも敵対勢力の秘密話というような、静かで怪しい雰囲気。

 

 そこから一転。

 

 響き渡る低音からの上昇音形で、一気に盛り上がる音楽。高さもある大きな舞台装置と、遠目から見ても分かるほど色とりどりで趣向を凝らした衣装に身を包んだ集団の出現。興奮や攻撃性が感じられる、熱い大合唱。

 この時点でもうめっちゃくちゃテンションが上がる。視覚、聴覚両方を殴ってくる。装置に音楽に人に、色々な使い方がめちゃくちゃ贅沢、とにかく資源の豊富さがすごい!(言い方)

 

 今壇上にトップスターさんやトップ娘役さんがいるとかいないとか、全然分からないけど、そんな右も左も分からない状態なのにとにかく興奮させてくるの、すごい。こんなに心昂る舞台があっていいの?開始数分だよ?

 そしてこの後、ノンストップで国王処刑まで畳み掛ける展開がまた最高なのだけど、それはまた後で。

 

トップスターさんが最高

 

 序盤、息もつけないほどの勢いの中で国王処刑が行われた後、「彼の言葉を聞こう、ロベスピエールの言葉を!」と、照明が落ちて暗くなるのと同時に、舞台中央せり上がりにスポットライトが差し、ロベスピエールが現れる。

 あ~~初心者な上に色々と鈍い私でも分かるよ!トップスターさん出てくるのね!と周りに倣って拍手をしながらワクワク見ていたら。

 

 とてつもなく迫力のある歌声。

 

 低音から高音までしっかり芯があって、響きも余韻も美しく、感情に溢れた歌声。劇場を一瞬にして優しく覆うように包み込んでいくのを感じた。このトップスターさんこそ、歌うまと評判高い雪組トップスター、のぞみふうとさんである。

  トップスターさんというのは、ビジュアル、立ち振る舞い、演技、歌、躍り、もちろんどれも素晴らしいものをお持ちなのだろうけど、それだけじゃなくて、何かをもって劇場全体をのみ込むことができる方なんだろうなと。ただビジュアルや技術が優れているだけではなくて、そういうったパワーを持った方こそがトップスターさんなのだな、と。あの時本能に叩き込まれた。

 

 のぞみふうとさん演じるロベスピエールは、希望に溢れた序盤から一転、策略にはまり、友人と決裂し、徐々に狂気に囚われ、最後は絶望のどん底へ、しかしその中で僅かな光を見つける。95分の短いお芝居の中で、激動の人生を歩み大きく感情を揺れ動かすのだけど、その感情の振れ幅が、これでもかと言うほどに歌声にのっていた。

 宝塚は初めてだけど、今までそれなりにいくつかミュージカルは見てきた、その中でも一番歌声に感情を感じて、魅了されていた。

 あの歌声に惚れない人なんているの…?あらがえなくない…?

 

ビジュアルが美しくて最高

 

 もうとにかく、とにかく全ての方が美しい。容姿端麗が選考基準になっているのも納得だし、大変厳しいお稽古をされてきたのだなというのも納得。お顔が美しい。スタイルもとにかく美しい、手足が長い。姿勢が美しい。

 ただの面食いか?と思われかねないけど、これ舞台ではめちゃくちゃ重要で、とにかく舞台映えが華やか。美しいお顔で大きな表情の演技をするから、遠くの客席にまでしっかり感情が伝わってくるし、臨場感が増して感情移入してしまう。スタイルや姿勢が美しいから、迫力のある動きに圧倒される。

 

 美しいお顔に加え、あの独特で濃厚な舞台化粧。正直なところ、生で観劇するまでは写真や映像を見て抵抗を感じていた。でも、劇場で実際に客席から見たときの美しさや分かりやすさと言ったら!後方席からでも、感情によって揺れ動く美しい表情を楽しむことができる。

 私はもう、あの舞台化粧じゃないと物足りない体になってしまったよ…

 

 美しいお顔で一際目を引いたのが、先の記事にも名前を挙げた、あさみじゅんさん。

 初めての宝塚な上に、顔認識能力がめちゃくちゃ低いことに定評のある私、そして後方席というトリプルコンボ。にも関わらず、一目でどこにいるか分かるほどのお顔の存在感。美しいだけでなくパーツも大きい。ご自身のその魅力を分かっておられてなのか自然となのか、そのお顔満面に感情を表現するから、ますます目を奪われてしまう。あの美しいお顔で狂気じみた笑顔や、しかめ面をされてみなさいよ、心を奪われて帰ってこられなくなるよ。

 美しさは正義。

 

作品が最高

 

 当たり前…と言われてしまうようなことかもしれないけど、難しい。

 今回のお芝居は完全オリジナルということだったのだけど、95分という短い間に、1つの革命が始まってそして終わっていく様、その中を生きた人々の激動の人生、友情、愛、憎悪、陰謀、さまざまなものを盛沢山に詰め込んで、よくまあここまで綺麗に纏まっているなと感動した。(偉そうにすみません生田先生最高です)

 纏まっているだけではなくて、前述したように掴みが最高だったり、盛り上がりのポイントや、観客の心を掴むポイントを外してなくて、緩急もあり、とにかく常に心が昂る。

 作品序盤から

 「敵に対して法律など必要でしょうか?」

 「国王である事こそが罪なのだ!」

 とかいう衝撃的な台詞を美しい笑顔でぶっこまれたら、もうこの世界の虜になるしかなくないです??

 

 そして、そのストーリーに力を与える音楽が大変素晴らしい。今回は特に、フランク・ワイルドホーン氏に全楽曲を提供頂いているという贅沢さ。観劇中は圧倒されるのに、観劇後は思わず口ずさんでしまいたくなるメロディ。

 私は家でずっと歌ってる。

 あぁ…スコア(全てのパートの楽譜がまとめられたもの)が欲しい…お金ならいくらでも出す…

 

登場人物が最高

 

 純粋で真面目だけど危うさのあるロベスピエール、一見口がでかいだけと思われがちだが頭の回転が速くそして情に厚いダントン、気は弱いが強い芯と行動力を持ったデムーラン、誰よりも強く逞しくて賢いマリーアンヌ。

 95分という短い中なのに、台詞や立ち振る舞いによってその魅力的なキャラクター性が、これでもか!と言うほどに伝わってくる。脚本・演出の素晴らしさと演技の素晴らしさ、全てがかけ合わさった結果の説得力なのかなと思う。雪組の皆さまと実際に交流している脚本・演出家の方が作品を作られ、配役し、長い稽古期間を確保する。これができるのは宝塚の強みなのかなと思う。もちろん全てがオリジナル作品な訳ではないのだけど。

 脚本・演出家の方から見た組子の皆さまの話、もっと聞いてみたいよね…

 

 主要人物以外もとてもキャラクターが際立っていて、何度見ても目が足りないし楽しくて仕方がない。イチオシはフレロンとフーシェだよ!

 そして私の最推しは、ジョルジュ・ジャック・ダントン!めちゃくちゃ好み分かりやすいってよく言われるよ!レッツチェケラ!(死後)

 

 余談なんだけど、この確立されたキャラクター性と、95分という短さからくる考察の余地だらけの環境、めちゃくちゃオタクが好きなやつじゃない?まだ見てないオタクいる?

 早く!早く見て!!ひかりふる路見て!!!円盤貸すから!!!!これからの人生ますます楽しくなるよ!!!!!

 

 

SVに辿り着けなった…

つづく。